発語がない子どもへの関わり方
「発語がない」「言葉が出ない」と感じると、保護者や先生は不安になるものです。
言葉は、大人が教え込まなくても自然と身につくように思えますが、その裏側には、周囲の音や表情を選び取り、意味づける複雑なプロセスがあります。
発達に特性のある子どもの中には、この「言葉が届く入り口」に難しさがあることがあり、それが発語の遅れにつながる場合があります。
まずは、言葉が出るための土台にどんな要素があるのかを理解することが大切です。
言葉が出ない理由はひとつではない
多くの子どもは、周囲の会話を聞いたり、大人とのやりとりを重ねる中で自然に言葉を獲得していきます。
しかし、発達に特性のある子どもの中には、その「入り口」でつまずくことがあります。
たとえば、次のような難しさです。
- 周囲の雑音の中から「言葉」だけを聞き分けることが難しい
- 大人の表情・目線・指差しなどから「何を意図しているのか」を読み取ることが難しい
- 口の動きや音のタイミングをまねることが難しい
言葉の習得にはこれらの情報処理が瞬時に行われる必要があります。
そのため、無理に言わせようと練習しても、本質的な学習にはつながりにくいことがあります。
刺激が届きやすい環境をつくる
言葉に遅れがある場合、「ことばの刺激が届きにくい」状態が背景にあることが考えられます。
特に発達に特性のある子どもは、
- 音を選び取る
- 人の意図を共有する
といったステップに難しさを抱えていることがあり、結果としてインプットが蓄積しにくいのです。
そこでコペルプラスでは、「より届きやすい刺激」を意識した言葉の課題を行っています。
● 共同注意を育てる
共同注意とは、相手が「どこを見ているか」「何に注意しているか」を一緒に理解するスキルです。
これが育っていないと、大人の言葉が何を指しているのかつながらず、言葉が「通り過ぎてしまう」状態になります。
興味を向けやすいおもちゃを使い、子どもが注目した瞬間を逃さずに指差しや目線で注意を共有することで、言葉が届きやすい状態を作ります。
● 擬音語を使ったやりとり
擬音語は、音に注意を向けやすく、行動と結びつきやすい特徴があります。
たとえば、靴をうまく履けない子どもに「もっと力強く」と言っても伝わらない場合があります。しかし、「ギュッ!」と声をかけると、自然と足に力が入ることがあります。
コペルプラスの課題では、「ポトン」で入れる、「ジャー」で出す、などの動作を促します。「入れる」という言葉で反応しにくくても、「ポトン」なら自然に動作が出るのです。
こうした体験の積み重ねが、言葉と行動の結びつきを強め、自然な発語につながっていきます。
日常でできる発語がない子どもへの関わり方
発語につながる最初のステップは、「伝えると相手が反応してくれる」という経験を積むことです。
そのために日常でできる大切な関わり方は次の通りです。
- 子どもの行動や視線をよく観察し、「これが好きなんだね」と気持ちを言語化する
- 声や動作にすぐ応じ、「うれしいね」「もっとやりたいね」など気持ちを返す
- 子どもが発したサインを「わかったよ」と受け止める
これらは一見遠回りに見えますが、「伝えたい」「わかってほしい」という気持ちを育て、コミュニケーション意欲を大きく伸ばす大切な土台となります。
まとめ|発語がない子どもと一緒に言葉を育てる
言葉は、“話させる”ことで育つものではなく、「伝えると嬉しい」、「わかってもらえる」、そんな経験の積み重ねの中で、自然に芽生えていきます。
焦らず、子どものペースに寄り添いながら、一緒に言葉の世界を広げていきましょう。
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